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写真はイメージです。
醜かった美沙をいじめていた香菜が襲撃され、顔に硫酸をかけられた。
ボーイに化けて店内に紛れ込んでいた犯人の行方はわからないままだった。
これで香菜は再起不能。
美沙は心の底から、ざまあ見ろと思っていた。
どこの誰が犯人かはわからなくても、美沙は胸がすく思いだった。
どこまで自分の運は上昇を続けるのか。
美沙は恐いものなしだった。
「キャハハハ!香菜のバーカ、いい気味ね!」
「だよねー。これで美沙ちゃんの時代がきたね」
「よーし!じゃあ、今夜はドンペリのプラチナ入れちゃおっかなあ!」
「おお!!そうこなくっちゃ!!…ドンペリプラチナ、入りまーす!!」
美沙は常連になっているホストクラブにその夜も繰り出し、高級酒のボトルを入れるよう注文した。
「ねえ、ルイくん、今日はアフター行ける?」
「もちろんだよ!美沙さんとなら、どこへだって行くさ!」
「もおおう、可愛いんだから。ほら、もっと飲んで飲んで!」
美沙はお気に入りのナンバーワンホスト、ルイを隣に座らせ、グラスに入った高級酒をぐいぐい飲んでいた。
ルイは店のナンバーワンだったが、美沙はチップを弾んでルイを独占していた。
「それにしても、美沙ちゃん。美沙ちゃんのおかげでウチの店の売り上げは上がる一方だよ。いつもありがとう」
「まあね。お金なら、いくらでも出してくれる太いパイプがあたしにはあるの」
「事務所の社長だよね」
「そうそう。あの人もバカよねえ。自分の変態趣味をあたしに見せておいて、それをバラされたくなくて、あたしに口止め料を払ってるのよねえ」
「ウヒャヒャヒャ。SMだったっけ?」
「そうそう、事務所の練習生をホテルに連れ込んでは鞭で百叩き、ロウソクの火で炙ったり、ロープで縛りあげたり…自分は網タイツにガーターベルトを着けて、ハイヒールを履いて、それを見られて興奮するなんてキモッ!!」
「キモいねえ~」
ルイは美沙の話に耳を傾けながらゲラゲラ笑った。
「しかもよ。自分は浣腸されて必死に我慢するところを見られて、もっと興奮するとか。変態も変態も、ド変態よねー!キャハハハハハハ!!」
業界で一、二を争う大手事務所のイケメン若社長の趣味は変態プレイ。
思いも寄らない裏の顔だったが、宮本は美沙と打ち解けるようになってから自分の奇妙な性癖を隠さなくなり、美沙に自身のプレイを見せつけて快楽を貪っていた。
とにかく、自分の変態ぶりを見られて興奮する。
美沙に罵声で自分を罵るように求めながらプレイに勤しむことで、異常に興奮が高まり、宮本は美沙の視線なしでは満足できなくなっていた。
しかし、そのことは誰にも知られてはならない。
表の顔は若手のイケメン社長で経営にも辣腕を振るい、父親から継いだ事務所をますます大きく成長させようと仕事に邁進している。
誰がどう見ても完璧な好青年だったが、だからこそ変態性癖があるのか。
人間、裏にはどんな顔が隠れているのかわからないものだ。
そして、今、自分はそれを利用しオイシイ思いをしている。
美沙はルイを話し相手に、高級酒をどんどん空けていった。
「さーてと。そろそろ帰ろっかなあ。ルイくん、行きましょ。お寿司でも食べて帰りましょ」
「はーい」
美沙は宮本からもらったVIP用のカードでいつものように会計を申し出た。
請求された金額はアステールが法人として支払う。
美沙はいくら高級酒を空けようが、自分の懐は全く痛むことがなかった。
「宝生さま、いつもありがとうございます」
VIPカードでスマートに会計を済ませると、美沙はルイを従えて夜の街に消えていった。
お気に入りホストのルイ、変態プレイを見てやる宮本以外にも、美沙は複数の男と関係を持っていた。
特にぺリウシアグループの総帥、倉橋からは結婚を申し込まれていた。
宮本も大手の芸能事務所の若社長で好条件な相手だったが、ぺリウシアグループの方がもっと莫大な財産がある。
それに、変態の性癖がある宮本との結婚など、あり得ない話だった。
「なあ、美沙。結婚しようよ」
「そうねえ。それもいいけど、宮本が何て言うかしら」
「ああ、あの変態か。どうだ、面倒なら始末するか?」
何だかんだ言いながらも、宮本は自分に好意を持ってくれている。
所属事務所の社長であるからには、宮本の機嫌を損ねれば仕事にも影響が出る。
美沙は宮本を無下に切れずにいた。
「美沙、ホストはどうなったんだ?」
「ああ。そうねえ、ちょっと飽きてきたかな。結局は色恋営業なんだしね」
「それもそうだな。じゃあ、やっぱり宮本は邪魔者なのか」
「そうね。気持ち悪いし」
「宮本が死ねば、副社長の山木が社長に就任すると考えていいだろうな。山木は小心者だ。ぺリウシアが株の大部分を買い占めれば言いなりになるだろうな。そうなれば、美沙、俺とお前の天下だぞ」
倉橋は圧倒的な財力を以てアステールの株を買い占め、傘下に置こうと目論んでいた。
「宮本は父親の急逝で社長の座についた世間知らずのボンボンだ。そんな会社に美沙を預けておいていい訳がない」
「あなたが社長になってくれるの?」
「いずれはそうなるだろうな。今の副社長の山木は無能だし」
「わああ、嬉しいわあ!」
美沙は大袈裟に喜んでみせた。
「あのド変態に付き合うのも飽きてきたわ。パパッと殺っちゃいましょうよ」
「おいおい、恐いこと言うなよ」
「うふふ」
「ま、美沙のそういうところが好きなんだけどな」
倉橋と美沙は良からぬ相談を始めた。
「武志さ~ん。今日も遊びましょうね」
倉橋と良からぬ相談を交わした翌日、美沙はいつものように宮本に呼び出され、宮本が変態プレイを楽しむホテルの部屋にやって来た。
「美沙、今日も思いっきり罵ってくれよ」
「任せろや!クソの豚野郎が!!」
「おおお、それそれ。それだよ、俺は汚らわしい豚なんだ」
汚い言葉を浴びせられた宮本は早くも恍惚とした表情を浮かべた。
宮本の足元にはロープで縛られたアステールの練習生が横にされ、ハイヒールを履いた宮本に踏みつけられていた。
アステールではデビュー前にボイストレーニングやダンスレッスン、演技の勉強をさせてもらえる練習生が多数在籍していたが、その中から宮本のプレイの相手が選ばれていた。
「おい!豚野郎!!てめえ、これを飲みやがれ!!」
美沙はバッグからピルケースを取り出した。
ピルケースから小粒の錠剤を何錠か出すと、美沙は宮本に飲むよう命令した。
美沙に罵倒され変態扱いされることに快感を感じる宮本は、何の薬なのか考えもせずに何粒も一気に飲んでみせた。
「おうおう!!クソが!!どうだ!!効くか!!」
「おおおお、美沙、もっともっと僕ちゃんをいじめて……ん、んん。グエ!グエエ!!」
錠剤を一気に飲み込んだ宮本は途端に苦しそうに悶え始めた。
それを見ながら、美沙は満足げに笑みを浮かべた。
錠剤は劇薬で宮本は倒れて床を転げ回って苦しみ出した。
「ゲホッゲホッ!!ゲゲゲゲ!!ぐ、ぐるじいい…何なんだよ、これ…」
「あら、苦しい?かわいそうにねえ。あなたもここまでね」
宮本は口から泡を吹き痙攣し始めた。
「さ、あなたは消えなさい。これ、あげるから」
美沙は宮本のプレイに付き合わされるはずだった練習生のロープを解き、札束を握らせた。
「このことは見なかったことにしてね。わかるでしょ?」
ロープを解かれ口止めの札束を握らされた練習生は、何度も頷きながら逃げるように部屋を出て行った。
「じゃあね、豚野郎。自分の変態趣味で身を滅ぼすなんて、おバカさん。うふふ」
美沙は苦しみもがく宮本を放置したまま、見下したように笑いながら立ち去った。