第十五話~六十年後の未来に来てみたけれど

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~ここから本編~

「ウヒャハハハ!佐伯まゆちゃんに会えるなんて、超ラッキーじゃーん!」

 

裕司は浮かれながら秀彦にトイレットペーパーの補充をさせていた。

いつの間にか、裕司は指図するだけで秀彦ばかりが作業をさせられていた。

それでも裕司の方がアルバイトの先輩。

秀彦は黙々と仕事をした。

 

「おい、佐東。お前さ、合コンとか興味あっか?」

「合コン?それは何だい?」

「お前さ、ホントに何にも知らないんだな。いつの時代の人だよ、翔和か?!」

 

裕司は冗談混じりだったが、秀彦は60年前から来たことを言い当てられたようで内心ドキリとした。

合コンというのは、男性と女性がそれぞれ複数で会し食事をしながら好みの相手を見繕う集まりのこと。

裕司はそう説明してくれた。

 

「で、さ。気に入った娘と気が合えばお持ち帰りもありだぜ。ヒャハハハ!」

「お持ち帰り?何を持ち帰ればいいんだい?」

「お前、バッカじゃねーの?!持ち帰るってのは、気に入った女の子とヨロシクやることだろ」

 

裕司は可笑しいのを通り越して呆れたように言った。

 

「まあ、何でもいいから来いよ。男の方の面子が足りないんだ。フェリフェリア知ってるだろ?北帝大生なら」

「うん、合格発表の時も見かけたよ」

「フェリフェリアが仕切る合コンなんだ。女の子のレベルは高いぞ。今度の合コンは白薔薇女子大の女の子たちとなんだ」

 

裕司が言う合コンは、秀彦も知る颯太が主宰するサークル・フェリフェリアが企画したものだった。

フェリフェリアはコンパ、旅行、食べ歩きなどが活動の中心で、北帝大学内でも出会い系サークルと揶揄されていた。

 

「なあ、来いよ。今回の面子を集めるのは俺の仕事なんだ。俺の顔を立てると思ってさ」

「うーん。僕は女性は苦手なんだ」

「いいんだよ、いてくれれば。とにかく人数が確保できればいいんだから。なあなあ、来いよ。いいだろ」

 

軟派な颯太が主宰するサークルが企画する集まりで、しかも女性と交流する場。

秀彦は女性と付き合ったこともなく気が進まなかったが、アルバイトの先輩である裕司に押し切られた。

 

「いいだろ、来いよ。じゃあさ、こうしようか。会費は半額、それでどうだ?!」

「うーん、じゃあ、一回だけだよ」

「そうそう!それでいいんだ!」

 

裕司は一方的に合コンの場所、日時、服装のことなど説明し始めた。

合コンに参加する日は、秀彦はサークルのボランティア活動がある日で、時間的にボランティアをしている高齢者施設から合コン会場まで直行しなければならなかったが、裕司は構うことなく話し続けた。

 

「へ?ボランティア?そんなサークル入ってんのかよ?まあな、ホントはスーツ着てこいって感じだけど、そういうことならどうでもいいんじゃね?普段着でもいいから来いよ」

「うん、じゃあ、そうするよ」

「やった!これで決まりだな!」

 

人数が揃えばどうでもいいのか。

合コンというものすら知らなかった秀彦だったが、アルバイトの先輩でもある裕司の為になるならと自分を納得させた。

 

裕司に強引に勧められた合コンは金曜日の夜に開かれることになっていて、秀彦は大学での講義とボランティア活動を追えると、指定された場所に急いだ。

 

「お!佐東、来たぞ!おーい、こっちだこっちだ!」

 

秀彦が地下鉄を降りると、改札口辺りに屯している学生たちがいた。

週末の夜の駅は混雑していたが、秀彦は大きく手を振っている颯太を見つけて合流した。

 

「佐東、お前、ホントに普段着で来たのかよ」

「豊田くんが、普段着でもいいって言うから」

「お前さ、真に受けんなよ。もう、しょうがねえな」

 

颯太は怪訝そうな顔をしていたが、秀彦が加わり面子が揃うと学生たちは予約しているレストランに向かった。

 

「今日は白薔薇女子大の女の子が来るからなあ」

「ウヒョー!緊張してきたよ!!」

 

集まった面子には北帝大学以外の学生もいて、秀彦には初めて見る顔の方が多かった。

フェリフェリアは北帝大学以外の大学とも交流があると、美和子に聞かされていた通りだった。

少しラフな感じでも男子学生たちはスーツ姿で、綿のシャツにジーンズ姿の秀彦は別の意味で浮いていた。

男子学生たちがレストランに到着すると、既に女子学生たちが予約した席についていた。

 

「ごめんねー、こいつが遅刻してきたからさ!」

 

颯太は秀彦を指差した。

一人だけ冴えない普段着姿。

着飾った女子学生たちはチラリと秀彦を見ると、ひそひそ耳打ちし合った。

 

「よーし!まずは自己紹介しようか!俺は、フェリフェリアの主宰者で、西川颯太でーす!北帝大の二年、もうすぐ理工学部に進級しまーす!」

 

男女それぞれが自己紹介し、秀彦にも順番が回ってきた。

 

「僕は、北帝大学の医学系、一年生です。佐東秀彦です」

 

この自己紹介を聞くと、さっきは秀彦を見てひそひそ話をしていた女子学生たちの目の色が変わった。

自己紹介が終わり、フリーに会話を楽しむ時間になると、態度を変えた女子学生たちは秀彦の周りに集まってきた。

 

「佐東くん、初めまして!佐東くんは将来はお医者様ね。素敵だわ!」

「お父様は開業なさっているの?!将来は院長先生ね!」

「高校はどこの出身?やっぱり、千敬高校なの?」

 

白薔薇女子大といえば、秀彦が60年前の世界にいた頃から良家の子女が通うお嬢様大学として有名だったが、普段着で参加した秀彦を最初は相手にもしない素振りを見せておきながら、医師を目指す学生と聞いて手のひらを返したように態度を変えるた女子学生たち。

医学系の学生だと言っただけなのに、勝手に名門進学校の出身で実家は開業医、将来は院長ということにされた秀彦は何と答えてよいか戸惑った。